私が新卒でMBA入学を決めた理由
私は学部生の時には商学部に在籍し、会計やマーケティング、経営戦略等、幅広い分野の講義を受講していました。ゼミでは会計を専攻し、ゼミの仲間とプレゼン大会への出場も経験しました。
その後大学で様々なことを学び、先述のプレゼン大会で「統合報告」について研究したこともあり、結果(会計数値)を導くための“プロセス”をより追求し、経営について深く学びたいと考えるようになりました。そこで、3年間で大学を卒業するという中央大学の早期卒業制度にチャレンジし、学部新卒でHMBAへ入学するに至りました。
MBAへの進学を決めたのは、大学で経営を学ぶうちに「将来、経営者の意思決定に関わる仕事に携わりたい」という目標を持つようになったからです。その目標を実現するためには、社会人になる前により高度な知識や思考力を身につけ、それらを実践できるような力を身につける必要があると感じていました。
そのような中でHMBAを選んだのは、単に経営の分析ツールの修得のみならず、社会科学の基本的な方法や思考法を学べるようなカリキュラムが組まれていたからです。私のような新卒学生は、MBAで学ぶような内容を、就職後すぐに仕事で直接的に使うのは難しいのではないかと感じていました。したがって、表面的な技法ではなく、きちんとした理論に基づいた考え方を学ぶことで、キャリアの中で長く活用できる力を得られると考えたのです。
HMBAの講義の中で特に印象に残っているのは、古典講読と企業家精神です。古典講読では、ロバート・B・チャルディーニの「影響力の武器」とランドル・コリンズの「脱常識の社会学」を題材に、要約と小論文が毎週課せられました。数十ページにあたる内容をWord2枚の分量にまとめる作業は、難解な文章の要点を読み取り、それを読み手に分かりやすく端的に表現する力が求められるものです。この講義を通し、本質を汲み取る力が養われたとともに、論理的な考え方や文章の書き方を学び、その力を伸ばすことができたと感じています。
また、企業家精神の講義では、ゲストとして来てくださる社長に対して私たちなりの提案をすべく、他の講義で学んでいるマーケティングや経営戦略、会計等すべての知識を総動員させて取り組む必要がありました。普段学んでいる理論を実務上どう生かすことができるのか、グループワークを通して深く考え、形にする良い経験ができたと思っています。
このようにHMBAの学びにおいては、知識の修得のみならず、深く考えることで物事の本質を捉え、それを論理的に組み立てる力を養うことができるものが多いと感じます。
修士2年になり、私は戦略ワークショップに所属しました。戦略ワークショップでは、個別企業の戦略や産業内での戦略的行動など、経営戦略や組織に関わる問題について、基本となる問いを自ら立てて分析し、独自の視点や枠組などを組み立てていくことが基本的な方針とされています。
その中で、私は「成熟業界におけるシェア逆転の競争戦略~なぜABCマートはリーダー企業になり得たのか~」というテーマのもと、最終レポートを書きました。毎週のワークショップでは、各人の研究内容について意見を出し合い、論文をより良いものにしていきます。新卒学生のほか、社会人経験者や留学生など様々なバックグラウンドを持つ同期からの意見は、新たな視点を得ることが多く、論文執筆の観点からはもちろんのこと、人としても世界が広がったように思います。
就職活動に際しては、業界や企業分析においてより深い考え方ができるという点で日々の講義が力になったように思います。ただし、志望書を書く際や面接の際に私が最も実感したのは、自分の考えを論理的かつ端的に相手に伝えることに関してHMBAで徹底的に鍛えられたのだなということです。新卒でMBAを取得するということ自体少数派であるため、人事の方に興味を持たれることも多いかと思いますが、上記のスキルが身についていたことによって、より充実した就職活動ができたのではないかと思います。
就職活動を経て、現在私は銀行に就職し法人営業をしています。法人営業とは、企業や個人事業主へ事業資金の貸付を行う融資や、潜在的なものも含め企業ニーズに合わせた商品を提案し、長期的に企業が成長していく方法を提供する提案営業が主な仕事となります。専門的な知識とともに、人に信頼される人間性が必要とも言えるでしょう。
正直なところ、新卒のキャリアでは、修了後すぐにMBAの知識を活かすということはそう多くないかもしれません。しかし、物事の本質は何かをあらゆる角度から考え、意見を論理的に伝えること等は、普遍的な能力として仕事に活かすことができています。また、法人営業担当としては、お客さまの置かれている経営環境を理解し、今後何をしていくべきかについて共に考えさせて頂く上で、より踏み込んだ考え方や提案ができるよう、日々努力しているところです。
先述の通り、様々なバックグラウンドの学生が集まっていることはとても魅力的なことです。より多くの人と議論し、HMBAでの2年間は自らの限界に挑戦してみてください。私自身、日々の講義とグループワーク、ワークショップレポート(論文)の執筆、就職活動、さらには留学生クラスの古典講読のティーチングアシスタントとしての仕事(要旨・小論文の添削)を抱え、時間的にも体力的にもハードな生活をしていた時期がありました。ただ、それらすべてに挑戦しやり遂げたことで、自分にしか得られない、充実したHMBA生活を送ることができたと思っています。皆さんも学びに貪欲になり、周りの仲間と切磋琢磨しながらとことん考え抜く2年間にして頂ければと思います。
(2017年3月10日)