損害保険会社勤務7年目に本プログラムに入学
入学前は損害保険会社で6年間、営業に携わっていました。代理店向けの営業でしたが、その先には企業の経営者が多くいらっしゃる。ところが、「企業を経営する」ということがイメージできなくて、なかなか話が噛み合いません。それは、自分が経営学という学問を全く知らないからだと思い当たりました。そこで、社内の選考を経て、企業派遣生として2020年4月に一橋ビジネススクール(経営分析プログラム)に入学しました。
初期の頃は、実は授業についていくのが大変でした。プログラムの特徴でもあるのですが、事前にテキストが指定されるものの、理論的な知識は自分でインプットするのが当たり前。講義ではその先、つまり皆で議論したり、実際の事象と照らし合わせたりするなど、アウトプットによって思考を巡らすことが中心です。したがって、授業時間外も日々、テキストや文献と格闘し、段々と授業に積極参加できるようになっていきました。
授業は全般として、文章を書く機会や人前で発表する機会の多さが印象的でした。たとえば文章を書き、人に話を伝える“いろは”を教える、「古典講読」(坪山雄樹先生)という授業があります。この授業で、いかに自分がそれまで無自覚に文章を書いてきたか痛感させられました。文章を書きプレゼンするスキルは、ビジネスにおいて必須であり、プログラム全体を通してそれを学べたことは得難い経験でした。
また、「戦略分析」(藤原雅俊先生)の講義では、多面的な思考、論理的思考力を身につける上で大変役立ちました。この講義の中で事業提案をする場があり、私のグループはあるメーカー向けに5年後・10年後のビジネスを提案しました。実現可能性も大事ですが、飛躍・跳躍するような面も見せなければならない。そのバランスの難しさが実感できました。
2年の後期に履修した「経営哲学」(田中一弘先生)も衝撃的でした。今後ビジネスをしていく際に何を一番大事にしたいのか、つまり自分自身の経営観の軸に気づくことができました。一橋のMBAの長所のひとつは、第一線の経営者のお話を聴く機会が多数あることです。2021年度からは三枝匡経営者育成基金(寄附講座)の研究会にも参加できるようになりました。そうした折にも、経営哲学での学びをふまえて、講師の方の経営観を考えながら聴くことができ、とても贅沢な時間だったと感じています。
経営分析プログラムでは2年次に、MBAの仕上げとなるレポートを書くために「ワークショップ」に所属します。私はもともと人事や組織、人材マネジメントに興味があり、経営組織論・経営戦略論が専門の佐々木将人先生のワークショップを選びました。同期は私を含め16名。ハイブリッド形式(対面とオンライン)で実施され、先生から懇切な指導をいただくとともに、皆で情報交換をしたり励ましあったりしながら、最後の発表に漕ぎ着けることができました。
それ以外に印象深かったのは、1年目に日本ビジネス・スクール・ケース・コンペティション(JBCC)2020に5名のチームで参加し、14校・140チームの中で優勝できたことです(*)。チームメンバーはみな社会人で、経験豊富な方ばかり。他のメンバーの進め方を間近に見られたことが、何よりの学びになりました。それをふまえ、今度は自分事として応用に取り組めたのが、MBA2年目でした。
なお2021年度は、JBCCの運営側に回りました。前年度はコロナで混沌とした状況の中でも、JBCCで素晴らしい経験ができたので、その恩返しがしたい、また、次の世代に繋いでいきたいという思いからです。運営を経験し、他校の方々と交流したことにより、それまで以上に一橋の長所を認識できたと思います。
(*)「一橋MBAでの学びがビジネスコンペで活きました!:日本ビジネス・スクール・ケース・コンペティション(JBCC)2020でSBAのチームが優勝」https://www.ma.hub.hit-u.ac.jp/column/2021/02/mba-jbcc2020sba.php
この2年間で最も身についたのは、前述した論理的思考力、多面的な思考力です。それを含め、この先の5年・10年成長し続けるための基礎が築けたと感じています。入学前は「経営」に対してイメージがなかったという話をしましたが、MBAを通じて情報に対する感度が磨かれ、視野も広がりましたので、以前よりは的を射た対応ができるのではないでしょうか。また、MBAに行かせてもらった身として、5年先・10年先には、働く女性たちが仕事も生活も充実させることに前向きな気持ちを持てるよう、少しでも貢献できればと思っています。
一橋は教授陣が素晴らしく、見識を深められる場であるとともに、世代や業界を超えて幅広い方と交流できる素敵な場です。特に私は丸2年間コロナ下で大学院生活を過ごしましたが、そうした状況でも非常に多くの経験ができました。在学中の方もこれから入学される方々も、興味を持ったことがあれば片足だけでも突っ込んでみる姿勢を貫くと、さらにMBA生活を楽しんでいただけるのではないかと思います。
(2022年4月)