フレームワークを覚えるより、現象の背景について
「なぜ?」と思考する力のほうが汎用性は高い
前職ではメーカーに勤務しており、プロダクトマネジャーとして製品の上市から終売までの管理を行っていました。担当していた新製品の販売が軌道に乗ったあと、中長期のビジネスプランを策定するためのディスカッションに加わる機会がありました。その際に製品レベルの専門性は持っているものの、会社や事業全体を考える上での知識や経験が不足していることに気づきました。そこで、ビジネスに関わる知識や視点を体系的に身につけるため、独学ではなくMBAで学び直す決意をしました。
一橋のMBAを選んだのは、少人数で、理論を基礎からしっかり学べることに魅力を感じたからです。単にビジネスに役立つフレームワークをたくさんストックするのではなく、現象の背景にある因果関係の連鎖を見据え、「なぜそういうことが起こっているのか?」を自分の頭で思考する。一橋のMBAはこの基礎の部分を重視しています。2年間、腰を据えて取り組もうと思い、仕事を退職しました。私は慎重なタイプだと周りから思われていたので、私が思い切った決断をしたことについて、友人や同僚たちには驚かれました。
思考の訓練という意味で、私が最も鍛えられた授業は『戦略分析』(藤原雅俊准教授)です。実在の企業を題材に、ビジネスが成功または失敗した理由について、背景にあるメカニズムに焦点を当て紐解いていく授業です。授業には事前課題をレポートにまとめて臨みますが、どんなに自信を持って発表しても、必ず先生や他の学生から厳しい指摘を受けます。自分の思考の浅さに何度も気づかされました。現実は複雑であり、必ずと言っていいほどフレームワークからはみ出すもの。「なぜ?」と深く考えることが、実践での汎用性を高めることにもつながるとわかりました。
なお、後半の1年間はコロナ禍の影響でリモートによる授業参加が中心でしたが、利点もありました。オンデマンド形式の授業については、聞き逃した箇所を繰り返し聞くことができます。おかげで自分のペースで学び、理解を深めることができました。ここでの経験を、新しい職場で活かしたいと思います。
(2021年2月掲載)